iPhoneアプリを用いた臨床研究

-身近になったヘルスケアデータの有効活用-

2015/11/25  慶應義塾大学医学部

このたび、慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)の福田恵一教授、高月誠司准教授らは、国内で初めてiPhoneを用いた臨床研究を開始しました。

医学研究をサポートするためにApple社が公開した「ResearchKit」という仕組みを使用し、不整脈・脳梗塞を早期に発見し、生活の質を守ることを目的としたアプリケーション「Heart & Brain」を木村雄弘特任助教が開発しました。アプリケーションでは、Apple Watchが記録した心拍数のほか、歩数、運動量などのヘルスケアデータを収集し、不整脈や脳梗塞に関する質問票、iPhoneに内蔵されたセンサーを駆使した運動評価を行います。

iPhoneユーザーを対象とする今までにない大規模な臨床研究であり、ビッグデータの構築と健康社会を目指すプロジェクトに大きな期待が寄せられています。

プレスリリース全文は、以下をご覧ください。

報道関係者各位

慶應義塾大学医学部

国内初 iPhone アプリを用いた臨床研究を開始

-身近になったヘルスケアデータの有効活用-

このたび、慶應義塾大学医学部内科学教室(循環器)の福田恵一教授、髙月誠司准教授らは、

国内で初めてiPhone を用いた臨床研究を開始しました。

医学研究をサポートするためにApple 社が公開した「ResearchKit」という仕組みを使用し、不整脈・脳梗塞を早期に発見し、生活の質を守ることを目的としたアプリケーション「Heart &Brain」を木村雄弘特任助教が開発しました。アプリケーションでは、Apple Watch が記録した心拍数のほか、歩数、運動量などのヘルスケアデータを収集し、不整脈や脳梗塞に関する質問票、iPhone に内蔵されたセンサーを駆使した運動評価を行います。

iPhone ユーザーを対象とする今までにない大規模な臨床研究であり、ビッグデータの構築と健康社会を目指すプロジェクトに大きな期待が寄せられています。

1.研究の背景

心房細動という不整脈は、脳梗塞のリスクを約5 倍にすると言われています。逆に脳梗塞で入院した方の5 分の1に心房細動が潜んでいるとも言われます。心房細動が原因で起きる脳梗塞はしばしば重症であり、命に関わることが多いため、早期診断と早期予防が肝心です。しかし、心房細動は必ずしも症状を伴うとは限りません。

近年、iPhone、Apple Watch などの携帯機器にさまざまな高機能のセンサーが搭載されるようになり、個人の健康データの収集が身近になりました。そこで本研究では、携帯機器で取得したデータを解析することで、病気早期発見の可能性を検討します。

研究を通じて、iPhone とその付属のウェアラブル機器が健康診断的役割の早期検出ツールとなれば、不整脈や取り返しのつかない脳梗塞を予防でき、国民の生活の質を守ることにつながると考えられます。

2.研究の概要

このアプリケーション「Heart & Brain」では、「ResearchKit」と呼ばれる仕組みを利用しています。これまでの医学研究は、研究協力者が病院や研究所に出向いて参加するのが通常でした。

世界中で何億もの人が携帯するiPhone を利用して、自由に臨床研究に参加していただき、効率的な医学情報構築の可能性を評価するため、不整脈、脳梗塞のリスク、生活の質に関する質問票に回答していただきます。

また、iPhone やApple Watch には、加速度センサー、ジャイロスコーブ、心拍数など、様々な高機能のセンサーが搭載されています。これらのセンサーが日常集積したデータをアプリケーションが収集し、解析します。さらに、センサーを駆使した、脳梗塞検出に役立つ可能性のある簡単な運動評価検査を行います(図参照)。

【図】スケールで回答する質問票や、Apple Watch が記録した心拍数などのヘルスケアデータ収集、搭載センサーを利用した脳梗塞診断につながる可能性のある運動評価検査、動悸手帳が含まれています。

■プライバシーと安全性について

収集されたデータは、個人が特定できない形で保存され、機密保持に万全を尽くして取り扱われます。臨床研究データ解析以外の目的に使用されることはありません。研究への参加は自由意思によるものですので、データ送信前であればいつでも研究への参加を中止することができます。

研究協力に利害、費用負担は発生しません。

■データの公開について

ご協力によって得られた研究成果、および、収集されたデータは、不整脈、脳梗塞の早期発見のために役立てるため、個人の情報を匿名化した上で、学会発表や学術雑誌等に公表されることがあります。研究から生じる知的財産権は慶應義塾大学に帰属します。

注意:アプリケーションは臨床研究データ収集用に開発されたものであり、それ以外の目的の使用を意図しておりません。研究参加によるいかなる健康被害、機器破損の発生は補償できません。

■対象について

iPhone アプリケーションを理解して使用できる成人を対象としています。

■アプリケーションのダウンロード

App Store から「Heart & Brain」を検索し、無料でダウンロードできます。

詳しくはhttp://www.keioep.com/heartbrainをご参照ください。

3.研究の意義

スマートフォンが効率的な医学情報の収集ツールとして使用できるかどうかを検討します。

iPhone を使用している方が対象というバイアスを考慮した結果の解釈が必要となりますが、日 常身につけている時計やスマートフォンで、無症状の不整脈や脳梗塞を検出することができれば、

病気早期発見と健康増進に寄与できる可能性があります。

4.特記事項

本研究は国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の【循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策実用化研究事業】の支援によって行われました。

※ご取材の際には、事前に下記までご一報くださいますようお願い申し上げます。

※本リリースは文部科学記者会、科学記者会、厚生労働記者会、厚生日比谷クラブ、各社科学部

等に送信しております。

【本発表資料のお問い合わせ先】

慶應義塾大学医学部 循環器内科

木村 雄弘(きむら たけひろ)特任助教

TEL: 03-5843-6702 FAX 03-5363-3875

E-mail: keio.heartandbrain@gmail.com

http://www.keioep.com/heartbrain

【本リリースの発信元】

慶應義塾大学信濃町キャンパス総務課:吉岡、三舩

〒160-8582 東京都新宿区信濃町35

TEL 03-5363-3611 FAX 03-5363-3612

E-mail:med-koho@adst.keio.ac.jp

http://www.med.keio.ac.jp/